JDOIT3とは

はじめに

 わが国は急速に超高齢社会への道を歩みつつあり、平成27年(2015年)には高齢者数が3300万人に達することが予測されています。
 その中で、我が国が今後目指すべき方向は、単なる長寿ではなく、国民一人ひとりが生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」の構築であると考えられます。
 このような考えに基づいて、国民の「健康寿命(健康でいられる期間)」の延長を目指して、厚生労働省は『健康フロンティア戦略』を策定しました。
『健康フロンティア戦略』における各施策の総合的な効果によって、生活習慣病の死亡率・発生率の改善、要介護者の減少を目指し、規模の大きな臨床試験が実施されることになりました。
 その中で、糖尿病については『糖尿病予防のための戦略研究』が計画され、「2型糖尿病発症予防のための介入試験(J-DOIT1)」、「かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関するパイロット研究(J-DOIT2)」、そして、「糖尿病合併症を抑制するための介入試験(J-DOIT3)」を開始することになりました。
J-DOIT1は糖尿病の予備群から糖尿病への発症を抑制する方法を見い出すための研究で、J-DOIT2は、かかりつけ医での糖尿病治療の中断を防ぐ方法の研究、そして、J-DOIT3が本研究になります。
健康フロンティア戦略の策定
 

J-DOIT3とは

 J-DOIT3(Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment study for 3 major risk factors of cardiovascular diseases の略称:ジェイ・ドゥイットスリー)は、厚生労働省の研究事業「糖尿病予防のための戦略研究 課題3」として実施される臨床試験です。
糖尿病に伴う心筋梗塞や脳卒中の発症および進行を防止できる方法を見い出す試験になります。
糖尿病予防のための戦略研究 組織図
 

J-DOIT3実施に至った背景

 インスリンの作用不足によって血糖、脂質などの代謝系に異常が生じ、その代謝異常が長く続けば、糖尿病にしばしば見られる合併症、すなわち血管合併症が出現します。たとえば、細小血管に生ずれば、視力障害や腎不全、神経障害などの原因となり、大血管に生ずれば、心筋梗塞、脳卒中などの原因となります。
 世界的に見ても、細小血管症の抑制に成功した臨床試験はありますが、大血管症を抑制する有効な治療法は未だに確立されておらず、どのように治療したら大血管症が抑えられるのか明らかではありませんでした。
 そこで、大血管症を起こす危険の高い患者様、つまり糖尿病の他に高血圧や脂質代謝異常のある患者様を対象として、この『J-DOIT3』という大規模な臨床試験を世界で初めて行なうことになりました。
 

J-DOIT3の目的

 2型糖尿病で高血圧または高脂血症のある患者様を対象に、従来の治療方法(従来療法)または、従来の治療法よりも目標をより厳しく設定した強力な治療方法(強化療法)のどちらかを受けていただき、どちらが糖尿病に伴う大血管症(主に心筋梗塞や脳卒中)の発症および進行を防止できるかどうかを調べることを目的とした臨床試験です。
 

臨床試験とは

 現在最良と考えられている治療方法であっても、さらによい治療方法が見つかる可能性があります。そのためには患者様にご協力をいただき、新しい治療方法の有効性、副作用などについて研究する『臨床試験』が不可欠です。これまで数々の臨床試験により、新しい有効な治療方法が数多く明らかになり、日常診療の指針として病気の治療に役立っています。
 この試験もこのような目的で、すでに広く使われている薬を使って実施される臨床試験です(新しい薬を開発するために行なう『治験(ちけん)』ではありません。)
 

試験の方法

 試験に参加いただくと、強化療法群か従来治療群かのいずれかに五分五分の割合でランダムに(作為の入らない方法で)割り付けられます(この方法は、どちらがよいかわかっていない治療方法を調べるためには最もよい方法とされ、世界中の臨床試験で採用されています。)どちらの治療方法になるかは患者の方も担当医師も選ぶことはできません。
 従来治療群に入った場合には、血管合併症の発症を低く抑えるために、現時点で標準と考えられている治療を受けることになります。
強化療法群に入った場合には、血糖、血圧、脂質をより正常値に近づけるために、従来療法よりも強化された食事療法や運動療法を実施し、薬物療法では血糖、血圧、脂質それぞれについてコントロールの様子をみながら、段階的に治療を強化します。治療の内容は、お身体の様子や食事療法、運動療法の実施状況をみながら決めていきますが、たとえば、食事療法や運動療法、内服薬を服用しても、血糖値が目標とする値(*HbA1cが5.8%未満)にならなかった場合は、インスリン注射を行う場合もあります。
*HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):過去1、2ヶ月間の平均血糖値を反映し、血糖コントロール状態の指標となります。
糖尿病予防のための戦略研究 組織図
 
 従来治療群に割り付けられた患者様も、強化療法群に割り付けられた患者様も、定期的に通院し、血液検査などを行い、担当医師、看護師、管理栄養士の指導を守っていただきます。また、全員に血圧計と加速度計(運動量の記録計)をお貸しいたしますので、定期的な測定結果を報告いただくことになります。
 特に強化療法群の患者様には、
  1. 体重測定  :毎日、同じ時間に測定していただきます。
  2. 食事療法  :管理栄養士による栄養指導を守っていただき、間食や夜食の禁止、お酒を控えていただく(日本酒で1日1合程度)よう徹底していただきます。
  3. 運動量の記録:担当医師や看護師などの指導を守って運動して、お貸しした加速度計で毎日の消費カロリーや歩数を測定していただきます。
  4. 血糖値の記録:血糖測定器をお貸しし、毎日の血糖値を測定していただきます。
  5. 血圧の測定 :お貸しした血圧計で毎日、同じ時間に血圧を測定していただきます。
  6. 禁煙    :禁煙の指導を受けることになります。
 これらの結果を担当医師に報告いただき、治療を進めていくことになります。
血圧計�・加速度計
 

試験の予定期間

 試験の予定期間は、登録されてから3年以上継続していただきます。
 

試験の参加予定人数

 試験は全国約70施設で行われ、強化療法群および従来治療群それぞれ1500名ずつ、合計で3000名の方に参加いただく予定です。
 

最後に

あなた自身のために、すべての2型糖尿病患者様のために、一緒に糖尿病の合併症を予防する治療方法を作り上げましょう。

 今までの内容に関心があったり、是非参加してみたいとの希望がございましたら、「参加するためには」をご覧下さい。
 
このページの先頭へ